中央銀行発暗号通貨(CBDC)の長所
ブロックチェーンは一つの技術として様々な場面で使用されています。例えば、価値の保存(ビットコイン)や機構の操作をコード化する手段(DAO)として、暗号資産を利用したクラウドファンディングの手段(ICO、STO、プライベートセール)として、あるいはスマートコントラクト執行のためのプログラム可能なフレームワークとして、考えられる限りのすべての産業で使われます。
ブロックチェーンは、インターネットと同様に、公共の場、プライベートどちらでも利用することができます。とはいえ、中央銀行発暗号通貨(以下CBDC)を使用する際、中央銀行と市中銀行、そして利用者にメリットはあるのか?と疑問に思われるでしょう。しかし、過去の【5つの理由】暗号通貨は法定通貨になり得るのか?で分析したとおり、ブロックチェーンは政府にも有益となる可能性も秘めているのです。
- 暗号通貨は、ユーザーにより高いセキュリティを提供します。これは辺境地や情勢が不安定な国にとって非常に重要なものです。
- 世界中の何十億という人々が、未だ金融サービスを利用できていません。法定通貨として機能する暗号通貨を通じて、政府はこれまでないがしろにされていた多くの人々に金融サービスの恩恵を与えることができます。
- プライベートブロックチェーンによって、ボラティリティを抑えることができます。分散化には相当のコストが発生するのは明らかですが、本質的にCBDCはビットコインのような分散型通貨と直接競合するのではなく、むしろ代替案としてなるはずです。ボラティリティを最小にすることで、一般利用者のためのブロックチェーンを基盤とした法定通貨となる可能性があります。
- 暗号通貨は仲介コストを省いたり、削減することができます。中央集権化した暗号通貨を使用することによって、VISAやMastercardなどの既存の仲介業者を使用する必要がなくなります。国民は金融サービス業者、ブローカー、民間銀行によって発生するコストを削減することができるでしょう。
中央銀行発暗号通貨(CBDC)の課題

このように、政府や中央銀行もブロックチェーン技術を利用すべき理由が多々あるのです。では、利用者や民間銀行にとってはどうでしょう。CBDCに基づく金融政策に抵抗を感じているかもしれません。その原因はどのようなものでしょうか。
既にこちらの記事で述べたとおり、プライバシー侵害の問題と マイナス金利が利用者の抵抗感の主な理由です。それに加え、民間銀行はビジネスモデルを大きく改変する必要に迫られるうえ、中央銀行からの介入にも慣れなければなりません(現在の部分準備銀行制度下では特にそう言えるでしょう)。本来、中央銀行は利用者と直接関わるための機関ではありません。しかし、民間銀行が現在担っている多くの役割に中央銀行の介入を強めることによって、顧客に新たな収益性の高い選択肢を与えられるよう進歩していくべきです。
それでは、世界のCBDCはどのような現状にあるのでしょう。既にCBDCを試験導入している国や共和国はあるのでしょうか?あるいは、中央銀行や金融機関はどうでしょうか。
世界のCBDC

画像:国際通貨基金
2018年11月、国際通貨基金(IMF)は大変興味深いCBCDに関する文書を出版しましたが、2019年4月の発表によれば、世界銀行と共に「疑似」暗号通貨をつくり実験を始めたようです。さらに、7月16日に発表されたIMFの報告書によれば、デジタル通貨やステーブルコインが既存の通貨を脅かす存在になるであろうと言及しています。オーストラリア、ウルグアイ、イギリス、 カナダ、 イスラエルのような国々でもCBDCの可能性を模索しており、マーシャル諸島のSOVのように既に導入されている事例もあります。これらの例に基づくと、このテーマに関して活発な研究が行われていることが分かります。
CBDCが成功するには
それでは、CBDCが実際に成功し、世界中で人々に受け入れられるようにするためにはどうすればよいのでしょうか?
その答えは、既存の通貨オプションと比較した際に暗号通貨が優位に立つということです。現在の金融システムにおいて、通貨保有者は物価の変動や国債総額に影響を与えることはできません。対照的に、公的で分散型のブロックチェーン技術に基づく暗号通貨は、そのボラティリティが批判の対象となっています。つまり、かつての金融政策の問題を排除しつつブロックチェーン技術の長所を活かすことができるようになれば、政府にとってより良い選択肢の一つとなるでしょう。しかし、その実現のためには、政府が発行レートを一定に保つ固定型のマネーサプライモデルを採用する必要があります。政府がこのような金融政策をとるかはまだ未知数ですが、時間が経つにつれ状況は変わってくるでしょう。一つはっきりしているのは、分散型デジタル資産を好むユーザーがいるということです。こうした傾向は、プライベート・ブロックチェーンによるデジタル法定通貨とビットコインのような分散型通貨の二つのオプションを持つ経済を生み出すでしょう。
原文:Central Bank Digital Currencies: The Next Step On Monetary Policy Development?