この投稿は3月に行われたDiego Zaldivar氏によるAMAセッションの一部を記事化したものです。
ツーウェイペグ
Q. ツーウェイペグはRBTCに対してどのくらい正確に機能するのでしょうか?スマートコントラクトと同じものなのでしょうか?
私はこれらの質問にできるだけ詳細を含めて答えていきますが、もしRSKのツーウェイペグに対してより興味が湧いたのであれば、私たちの主任研究員であるSergio Lernerがまとめたサイドチェーン全般とRSK ツーウェイペグに関する情報を網羅しているこちらの記事を参照してください。

画像:RSKツーウェイペグ図
RSKのネイティブコインであるスマートビットコイン(RBTC)はビットコインに 1対1で繋がっているので、RBTCを生成する唯一の方法は、RSK Federationによって制御されるBitcoinブロックチェーン内のマルチシグアドレスにBTCを送信することです。マルチシグアドレスに到着したBitcoinはロックされ、その転送の証明(SPV証明)はブリッジ契約と呼ばれるRSKブロックチェーンの特別なスマートコントラクトに送られます。現在、RSKフェデレーションはブリッジ契約に新しい振替を通知するこのプロセスを行っていますが、このプロセスは完全に分散化されており、誰でもこの情報を契約に提供できます。ブリッジ契約がこの証明を取得すると、受信したBTCに相当する量のRBTCを、Bitcoinブロックチェーンでプロセスを開始したBTCアドレスに対応するRSKアドレスに送信します。この方法により、BitcoinからRSKへの移行は完全に分散化され、最小限の信頼を使う方法で終了します。
では、Bitcoinに戻したいときに何が起こるのかを確認してみましょう。RBTCをBTCに交換するためには、まずRBTCをRSKブロックチェーン上のBridgeにある特別なアドレスに送信する必要がありますが、攻撃される場所を減らす目的でスクリプト機能が制限されているためBitcoinはセカンダリブロックチェーン上のトランザクションを検証できず、RSKフェデレーションによるBitcoin側からリリーストランザクションのシグナチャーを支援することが必要になります。そのため、RSKフェデレーションノードは、新しいBTCリリーストランザクションが作成されたことを確認および検証したときに署名します。おもしろいことに、RSKフェデレーションノードは私達のセキュリティチームによって開発されたHSM(ハードウェア・セキュリティー・モジュール)を使っているので、RSKフェデレーションメンバーは秘密鍵にアクセスできず、資金を持ち逃げすることはできません。起こり得る最悪の事態はHSMを抜いてペグを失速させることでしょう。承認取引がHSMに送信されると、有効性が検証されてから署名されます。十分なシグニチャーが収集されると(BTCアドレスはマルチシグアドレスであるため、資金をリリースするにはN個中M個のシグニチャーが必要です)、BTCは交換を開始したRSKアドレスと関連のあるBTCアドレスに送信されます。
RSKフェデレーションがペグに与えうる最も大きな損害は「失速」ですが、現在研究チームはドライブチェーン (Drivechain) と呼ばれるBitcoinプロトコルの拡張に取り組んでおり、それはBitcoinマイニングネットワークを利用した資産のリリースを可能にします。もしこの提案がBitcoinコードに取り入れられれば、信頼を最小化したツーウェイペグが完成するでしょう。
Q. 取引所はこのペグによる価値にリアルタイムで対処でき、またエンドユーザーも、取引をせず、このスマートコントラクトを直接利用することができますか?
BTCとRBTCいずれかのブロックチェーンの再編成による資金の損失を防ぐために、お互いに交換するプロセスは約15時間かかります(100ビットコインブロック)。 またBTCをRBTCに交換するためのペグは誰でもを使用できますが、今年後半(2019)まではホワイトリストに登録する必要があります(RBTCからBTCに交換する場合は制限はありません)。
ペグを使用するという技術の必要性、待機期間によって生じる軋轢、およびホワイトリストに登録するプロセスなどの少々複雑な手順があるため、一般ユーザーが簡単にRBTCを手に入れられるよう多くの取引所がRBTCを提供しています。二重のLightningノードとRIF Luminoノードを使用したBTCとRBTC間のアトミックスワップシステムは現在開発中であり、すぐにでもユーザーは仲介なしでBTCをRBTCに交換できるようになるでしょう。
私はこのテーマを明らかにしたと考えていますが、不足や不明瞭な部分があると感じられたらお知らせください。ご指摘頂いた点を改善致します。
RIFトークンの使い道

Q. RIFの本当の価値は何なのでしょうか?その価値は独自のユティリティーにあるのですか?どのようなユティリティーを持っているのでしょうか?
RIFは標準プロトコルのセットでありトークンでもあるため、この質問には2つの側面があります。 RIF OS(Rootstock Infrastructure Framework Open Standard)は、ブロックチェーンを基盤としたスマートコントラクトを中継して、分散型アプリケーション(dApp)をより速く、より簡単にそしてスケーラブルに開発することを可能にする一連の分散型プロトコルです。
初期のプロトコルには、RIFディレクトリ(ネーミングサービスプロトコル)、RIF決済(オフチェーン・決済プロトコル)、RIFデータストレージ(データストレージおよびストリーミングプロトコル)、RIFコミュニケーション(セキュアルーティング、セッションおよび暗号化通信プロトコル)、およびRIFゲートウェイ(RIF)が含まれます(ゲートウェイはクロスチェーン転送とオラクルサービスを含む相互運用性プロトコルです)。この標準プロトコルを使用する開発者は、分散型プロトコルの内部の仕組みや低水準機能を知る必要はありません。そこまでの専門性がなくとも、分散型インフラ(ブロックチェーンとP2Pの両方)の使用を簡素化するAPIおよびライブラリとして実装するインタフェースとして定義することができます。

このプロトコルが開発された理由は、ブロックチェーンの分散型ネットワーク(例:Bitcoin, RSK, Ethereumなど)を大衆化から遠ざけるいくつかの問題を解決するためです。私たちがその問題の中で最も深刻だと思っているのは、持続可能なスケーリングと開発者にとっての使いやすさです。スケーリングの場合オンチェーンスケーリングが可能ですが、ノード維持の費用が高く、結果中央集権型になってしまいます。使いやすさの面では、開発者が技術を習得するのに数ヶ月の時間がかかること、そして分散型アプリケーションをつくるための、高水準プロトコルと再利用可能なコンポーネントがないという非効率性もあります。
RIF OSのガイドラインに従って、一連のブロックチェーンベースのP2Pプラットフォームが構築されています。これは、RSK上にRIFディレクトリを実装したRNSであり、一番最初に実装される予定です。 RIF 決済の最初の実装であるRIF Luminoもまもなく開始され、2019年にはフルスタックの最初のバージョンが利用可能になる予定です。
RIFトークンの未来
ここからは、RIF OSエコシステム内でのRIFトークンの有用性について短く説明します。
RIFトークンの最も主要な用途は、RIF OSエコシステムで提供されるすべてのサービスにアクセスすることです。 RIF OSプロトコル標準サービスに準拠するには、プロバイダはサービスと引き換えに、必ずRIFトークンを受け入れる必要があります。それに加えて、特定のプロトコルは、RIF Marketplaceでサービスを提供するために、すべてのサービスプロバイダがスティークする必要があるコラテラル(担保)としてRIFトークンを使用します。
分散型プラットフォームの性質を考えると、この担保のシステムはとても重要です。このような埋め込み型の保険メカニズムがなければ、ユーザーへの全てのサービス品質を保証することが不可能になるからです。 それに加えて、特定のプロトコルでは、コラテラルとサービスプロバイダが持つコントラクトの数の比率が、登録済みプロバイダ間で新しいサービスのコントラクトの動的配布のために利用されるでしょう。
また、それほど遠くない将来には、RIFトークンの他の用途がRIF市場を取り巻くようになると予想されます。 その内最も可能性が高い2つの応用があります。1つ目はステーブルアセットのサービス価格を表示するために使用することができる、カウンターパーティ・リスクフリーのステーブルコイン(例:$ RIFUSD、$ RIFARSなど)の発行の担保としてのRIFトークンの使用です。そして2つ目は、流動性と共通資産を必要としないRIF決済ハブの間での取引を決済することを可能にするRIFトークンの使用です。
私たちは長期的にRIF OSを、すべての主要なスマートコントラクトに対応しているクリプトエコノミーで利用される、オフチェーン・インフラサービスのための統一市場になると考えています。そのため、RIFトークンは当初RSKネットワーク上で生成されましたが、将来的にはEthereumやEOSのような他のプラットフォームに移植可能になる予定です。 これにより、経済圏がさらに広がり、分散型エコシステム全体の脆弱性が解決され、「価値のインターネット」の実現にもう一歩近づくことになります。