【ブロックチェーン応用編その1】ブロックチェーンとITインフラストラクチャ

毎年数十億ドルもの資産がITインフラ事業1に投資され、近年その傾向は指数関数的に増加しています。アマゾン・ウェブサービス (AWS) やアリ・クラウド(Ali Cloud)、マイクロソフト・アジュール(Microsoft Azure)、グーグル・クラウド(Goolge Cloud)のようなクラウドサービスは、それらのプラットフォームを通じてホスティングやコンテンツ配信、データベース、安全管理などのサービスが世界中の企業や組織、そして個人によって日常的に使用されるようになりました。2017年後期AWSが報告した収益レポート上でのアマゾン・ウェブサービスの他の業種(eコマース、広告、技術開発、研究など)への財務上の影響を考えれば、ウェブサービス無しでは現在のアマゾンは存在し得なかったでしょう。今回は、現状のマーケットの課題と、ブロックチェーンがどのようにして、この数十億ドルのビジネスであるITインフラの経済システムにインパクトを与えるのか、その可能性を分析していきます。

1・・・インフラストラクチャ(インフラ)

コンピューターシステムを実現するためのソフトウェアやハードウェアの基盤のこと。また、通信の分野では、ネッワークを構築する際の通信回線や通信機器、料金体系の整備のことを指す。

参考:コトバンク より

 

1. ダウンタイム、集中管理型サービス、地域別規制

SimilarTechによると、2019年5月現在、約300,000のウェブサイトがホスティングサービスにAmazon S3を使用しています。何十万という企業が一つのウェブサービスを使っていることは驚嘆すべきことでありますが、実際この利便さが裏目に出た事件がありました。2017年にAmazon S3が5時間ほどダウンした事件では、サービスに依存していた何十万の企業が同時に被害を受けました。アマゾン自体もこのダウンによって自社のダッシュボードをアップデートすることが出来ず、サービス利用者への警告をすることができませんでした。この事件を通じて多くの企業が危機感を覚えることになります。企業にとってサービスのダウンタイムは致命的であるからです。全ての企業は24時間365日スムーズに動くウェブサイトやコンテンツ、アプリケーション、データベースを必要としていますが、たった1つの集中管理型サービスに依存しているという点では改善が難しいのが現状です。
集中管理型サービスとは違い、クラウドコンピューティングの概念はWebサービスの一元化のリスクを軽減するために、世界中に複数のサーバーを配置することに基づいています。しかし、クラウドコンピューティングを集中管理化無しに成立させることは本当に可能なのでしょうか?世界中に数千のサーバーを分散させることは確かに可能ですが、それらのサーバーを制御する単一の端末が必要になることに変わりはありません。更に、クラウドコンピューティング企業は常に、特定地域の法律や規制に従う必要があり、柔軟性を重視する企業にとっては理想的な解決方法とは言い難いのです。


この課題はブロックチェーンに基づいたITインフラプロジェクトにとって大きな可能性を秘めたチャンスです。世界中の何百万人もの人々のサーバーとディスクスペースをリソースとして使ったクラウドコンピューティングが、この状況で解決策と成り得ます。例えば、Substratum, Stratis, そしてStorjのようなプロジェクトは文字通り、世界中のWebホスティングを必要としている人とディスクスペースとアップタイムを共有することが可能にしています。さらにディスクスペースの貸すことで、トークンをサービス報酬として得ることが出来るのです。最近では多くの企業が、すでに分散型ITインフラを小規模で試し始めています。多くのテストを必要とする比較的新しい分野ではありますが、高度な技術を持つ企業なら、ハードウェアリソースの観点から見たリスク軽減の可能性を見出すことができるでしょう。

2. コンテンツ配信ネットワーク

ブロックチェーンは分散型コンテンツ配信ネットワークを通じてITインフラ産業に必ず破壊的な革新をもたらすことができます。実際の例をみてみましょう。現在、コンテンツ作成者(番組、シリーズなど)はNetflixやPrime Video、ケーブル事業者などのコンテンツネットワークとのビジネス上の取引を確立する必要があります。一度合意が形成されると、アマゾン・クラウドフロント(Amazon CloudFront)やアカマイ(Akamai)などのサービスは大抵合意したコンテンツをエンドユーザーに適切に届けます。このビジネスモデルはどのコンテンツがいつ、どこで、どれくらいの価格で配信されるかがコンテンツネットワークによってのみ決定されるため、完全な集中管理型のモデルなのです。それに比べて、ブロックチェーンに基づいたLivePeerViulyのようなサービスは、完全にコンテンツ配信チャンネルを分散することができます。何千、何百万ものコンピュータが必要な計算リソースを提供するコンテンツデリバリー・ネットワーク(CDN)を生成することができれば、コンテンツ制作者は何百万もの視聴者にコンテンツを視聴させるための、集中型コンテンツ配信業者も集中型技術リソースも必要としなくなります。


分散型アプリケーションを使用することで、第三者との取引を成立させたり、ITインフラに大量の資本を投資したりといったことをせずに、世界中の数千のコンピューターが放送局としての役割を果たすことできます。分散型プラットフォームに基づいたCDNは地理的近接性に基づく高速ストリーミングも可能にします。このサービスが広く普及すれば、間違いなくエンターテインメント産業に大きな影響を与える事件となるでしょう。多くの産業専門家が分散型CDNは文字通り、コンテンツネットワークを根本から変えると主張しています。しかし、これらの企業がプレミアムコンテンツを定期的に生み出すことに多くの資金とリソースを割り当てることを念頭に置いているならば、その可能性は非常に低いです。ブロックチェーンは大小様々なコンテンツ作成者に利益をもたらしますが、その恩恵の受け方はそれぞれ異なります。

3. コンテンツ規制

多くの国でウェブの閲覧中、特定のコンテンツにアクセスができない様、規制がかかっています。この局面でもブロックチェーンはゲームチェンジャーと言えるでしょう。中国ロシアのような国は市民が複数のウェブサイトにアクセスすることを禁止しています。これはインターネットサービスプロバイダ(ISP)を通してインターネットへのアクセスをコントロールすることで可能になる規制です。消費者は常により良いバーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)サービスを使用する選択肢を持っていますが、全ての人が専門知識、お金、そして専門の技術を学ぶ十分な時間があるわけではありません。更に、政府はVPNサービスを取り締まり、匿名や偽の地域からのアクセス痕跡がある場合には、ユーザーがウェブサイトにアクセスできないように厳しい措置を取っています。
既に述べたように、ブロックチェーンを通じて第三者のリソースを使用することで、ウェブサイトの所有者は世界中に分散している他人のコンピューターでドメインを簡単にホストすることができ、彼らの情報を暗号化して保存しておくことができます。それぞれ異なるDNSプロトコルが検閲を飛び越えるプロセスとして使用されるため、ISPはこの場合直接的な制御をすることはできません。自分のサーバーやディスクスペースを貸出したければ誰でもトークンを稼ぐことができ、それによって同時に、貸してもらうユーザーは地域の規制を回避し、手頃な価格で分散型ウェブホスティングを使用できるようになるのです。このシステムでは他の人がコンピューターを使用している間に、第三者による違法コンテンツの保存を予防するため、全てのコンテンツをスキャンするアルゴリズムが設定されています。
これは、ブロックチェーンのもう1つの優れたユースケースです。地域の規制を避けたい企業は、ウェブサイトやサービス、アプリケーション、データベースなどを第三者の分散型リソースを利用して構築できます。しかし、現段階では分散型ホスティングが本当に高いセキュリティレベルを必要とする大企業に適用できるのかは未だに実証されてはいません。

4. ネットワーク中立性2

またネットワーク中立性が脅かされている現状を考えても、ブロックチェーンは近い将来、この問題を解決するカギになるかもしれません。一般的にはネットワーク中立性とは企業よりもエンドユーザーに対して直接的な影響を与えるものと考えられていますが、ISPがネットワーク利用料を任意で調整できる場合、購読型のビジネスモデルにも直接的な影響を与える恐れがあります。当前のように、米政府によってネットワーク中立性を守る規制を撤回する方針が発表された時、Netflixとその他多くの企業が懸念を示しました。この文脈からすれば、多くのコンテンツ会社や流通業者がブロックチェーンを利用することで、ISPの規則に依存することなく、コンテンツ配信を分散化することになるかも知れません。分散型CDNにより、企業はISPの使用料体系に囚われることなく、ITインフラのコストの削減をすることができるのです。
アマゾンやマイクロソフト、そしてITインフラ業界全ての大手企業は,ブロックチェーンの短期的および長期的なポテンシャルに気づいており、間違いなくトレンドに乗り遅れたくないと思っているでしょう。現時点では、何百という優良企業がITインフラ全体を分散型のオプションに移行することを想像するのは困難ですが、これは企業が間違いなく実験したい分野の1つです。

2・・・ネットワーク中立性

インターネット接続事業者や各国政府は、インターネット上のすべてのデータをユーザーが公平に利用できるようにすべきだとする考え方。同様の考え方は以前から存在したが、「ネットワーク中立性」という言葉は2003年に米国の法学者がを制限したり、利害が一致する企業のコンテンツを優遇したりする不公平な事態は避けられる。

参考:コトバンク より

 

原文:Tech Infrastructure & Blockchain Technology: A Game Changer? by RSK Labs