本記事では、RSKのCTO Adrian Eidelman氏が6月のAMAからの質問に答えています。
取引や技術面に関して
RSK Faucetが存在していた時にRSKアドレスを持っていた唯一のJaxxウォレットからトークンを回収するにはどうすればいいですか?
頻繁には発生しませんが、定期的にRSK Testnetブロックチェーンの再起動を行います。これは、すべての勘定残高が0になることを意味します。Testnetのリセットが最近実行されたため、リセット後にTestnetの資金を回復する方法はありません。またFaucetはまだ存在し、そこでTestnet RBTCを手に入れることができます。
BTCアドレスとRSKアドレスは、ETHアドレスのように見えますが、相関関係はありますか。
RSKアドレスは、ETHアドレスに似ています。ユーザーが誤って資金をETHアドレスに送金したり、ETHアドレスからETHアドレスに送金したりすることを防ぐため、Ethereumに似た任意のネットワークに実装できるアドレスチェックサムメカニズムを実装しました。これはノード自体には適用されませんが、クライアントレベル(例:ウォレット)で考えることが重要です。チェックサムメカニズムについては、https://github.com/rsksmart/RSKIPs/blob/master/IPs/RSKIP60.mdで紹介しています。
BTCからRBTCに変換する簡単な方法はありますか? できれば交換不要であってほしいのですが。
BTCをRBTCに、またその逆に変換するためのネイティブなメカニズムは既に存在し、それをツーウェイペグと呼んでいます。実際には、ユーザーがBTCをRBTCに変換しようとすると、一部のBTCがビットコインブロックチェーンでロックされ、同じ量のRBTCがRSKブロックチェーンでロック解除されます。 RBTCを再びBTCに変換する必要がある場合、RBTCはRSKブロックチェーンで再度ロックされ、同じ量のBTCがビットコインブロックチェーンでロック解除されます。セキュリティプロトコルによって、両方のブロックチェーンで同じビットコインを同時にロック解除することはできません。これにはトランザクションのファイナリティー(確定)が必要であり、それをペグがBTCまたはRBTCをロック解除するトランザクションに対して何百ものブロック確認を必要とした理由です。
すべてのユーザーが必要な数のブロック確認を待ってくださるとは限らないので、交換の際にはユーザーに交換費用を請求することでBTC / RBTCをより速く手に入れられるようなメカニズムを提供しています。RSKのツーウェイペグデザインについて以前ブログ記事でも紹介しました。
また、BTCをRBTCに変換するためのツーウェイペグメカニズムの使用方法の詳細については、https://github.com/rsksmart/rskj/wiki/BTC-RBTC-conversionを参照してください。
マイニングをしない人のためにLuminoやRSKノードを運営するインセンティブはありますか?
RSKノードを実行することで、自分自身のトランザクションの有効性だけでなく、少数派グループによってシステムのルール変更ができないことも確認できます。したがって、RSKユーザーにとっては、独自のフルノードを実行することが最善の方法です。そうは言っても、私たちはフルノードであることを証明するための最初の分散システムを設計し、現在開発中で、将来的にはフルノードにインセンティブを与えることができます(Devcon3で行ったプレゼンテーションをご覧ください)。この技術は、RSKとLuminoのフルノードに報酬を与えることができる、フルノードの経済的報酬を実現するでしょう。
マイニングプールの人々がRSKに参加するためのインセンティブはありますか? もしあれば教えていただけますか?
もちろんです。マイナーは自分が利用するすべてのRSKブロックから高い割合で取引手数料を得ています。RSKプラットフォームが採用どんどん進め、ネットワーク内の取引数が増加すれば、これらのインセンティブはますます魅力的なものになるでしょう。私たちは現在、ネットワークがブートストラップされている間のインセンティブの整合性を高めるために、すべてのRSKキープレーヤー(マイニングプールを含む)にインセンティブを与える他の方法を探しています。
RSKのマイニングを開始することに関心のあるマイニングプールは、mining@rsk.coまでご連絡ください。
マイニングとノード構成の手順ガイドはありますか?
マイニングに関するブログ記事は現在いくつか執筆中で、数週間以内に公開される予定です。一方、マージマイニングとマイニングノードの設定については、下記リンクを参考にしてみてください。
マージ・マイニングについて: https://github.com/rsksmart/rskj/wiki/Merged-Mining
マージされたマイニングプールから使用されるRSKノードの構成: https://github.com/rsksmart/rskj/wiki/Configure-your-RSK-node-to-be-used-from-a-merge-mining-pool
コミュニティの中で技術的知識を持たない人々向けのガイドを作ること予定はありますか?初心者にはとても価値があると思います。
私も、ブロックチェーンの世界に参入しようとする人々のためにより多く、良い資料を作成し、そのような方々ができるだけ早く、簡単に学ぶことができるようにする必要があると感じています。私たちは最近サンフランシスコにInnovation Studioをローンチしましたが、そこでは「より質の高いコンテンツ(ガイド、チュートリアルなど)を開発し、初心者にも上級者にも、ブロックチェーンとRSKを使い始めやすいようにする」という目標もあります。これについてはすぐにお知らせします。
プロジェクト、外部との共同、暗号コミュニティ全体について
今後も“Blockchain for Humanity” のような活動に参加する予定はありますか?

ビットコインとDLT(分散型台帳技術)は価値の保蔵・移転ネットワーク(私たちはこれを、将来何十年にもわたって多くの人々の生活を変化させることができる「価値のネットワーク」と呼んでいます)のための新たな分散型プログラマブルネットワーク基盤を築くことができると思います。私たちはこの目的ににあったユースケースを推進できるプロジェクトを常に探しています。今のところこのビジョンに即しているプロジェクトとしてBlockchain for HumanityだけでなくCircle of Angels、DIdi、Bitgiveなどとコラボレーションしてきました。
RSKで開発されているプロジェクトはいくつありますか?
現在RSKで進行中のいくつかのユースケースは、私たちのウェブサイトで見ることができます。このページには、RSKで実行されているすべてのユースケースが掲載されているわけではなく、ほかにも政府、銀行、ゲーム、ロジスティックス、開発ツール、その他の産業分野とのプロジェクトもあります。その中には現在進行中のものも、RSKで間もなく開始される予定のものもあります。これまでRSKで開発したプロジェクトのうち、アルゼンチンの自治体でのユースケースは良い例の1つでしょう。私たちは今年も、サンフランシスコのRSK Innovation Studioのオープニングや、エコシステム基金や、プラットフォームの採用を促進すると予想されるアジアでの事業の立ち上げなど、多くの取り組みを開始しています。
RSKはETHやIOTAのような他のプロジェクトにどのように対抗できると考えていますか?

EthereumはRSKの最も近い関係です。RSKと同様、PoWベースであり、同様の仮想マシンとアプリケーションインターフェースを使用しています。ただし、いくつか重要な違いがあります。
経済的な観点から見ると、EthereumのEtherはもともと投機的なトークンであり、ネットワーク効果は現在Bitcoinをエコシステムの価値を保存するただ一つの強力な暗号通貨にすることを推進しています。この市場統合の傾向が続けば、Etherの価値は低下するかもしれないです。
また、Ethereumは、専用のトークンを持つdApps向けにカスタマイズされた、汎用スマートコントラクトレイヤーです。これらのdAppsは、Etherが中間トークンとなったがゆえに発生してしまった摩擦を取り除くことでようやく、数百万人が使用できるようになります。このコミュニティーの力はEthereum(と他のスマートコントラクトプラットフォーム)を、取引がトークンで支払われ、ユーザーはサードパーティレイヤーにトークンで少額決済を行い、Etherでのトランザクションガス支払いを代替してもらうという、事実上の経済抽象化に陥れるでしょう。したがってEtherの価値は危険にさらされています。スマートコントラクトステーキングは対抗勢力でありますが、MakerDAOのような最大級のEthereumプロジェクトのいくつかは、トークンのステーキングを可能にしており、Etherはステーキングメカニズムとしての排他性を失いつつあります。一方、RSKはBitcoinをネイティブトークンとして使用しており、ユーザーにコインをため込むよう促す必要はありません。
最後に、EthereumはPoSブロックチェーンとして現在再構築中です。これは主に、スケーラビリティの点において限界に達したためです。Ethereum 2.0への移行には膨大な技術的リスクが伴い、成功するには数年かかります。一方、同社のユーザーベースは、すでにかなり高額な標準PCをフルノードとして使用するために所有し、高コストの環境でアプリケーションを実行しようとするでしょう。RSKには、圧縮と集約方法を使用したオンチェーンレイヤーの保守的な拡張に基づいて、ストレージの使用料を活用しながらより有効的な資源のの割り当てを行うという、異なるスケーリング計画があります。このレイヤーはセカンドレイヤーのスケーリングソリューションに最適であり、私たちはこのような開発を私たちのプラットフォームで奨励しています。セカンドレイヤーネットワークで作業している多くのチームは、明日に信頼できる安定したオンチェーンレイヤーを必要としています。
IOTAでは、すべてのユーザーをマイナーにして、トランザクションに埋め込まれたプルーフオブワークを提供することで、コンセンサス集中化の問題を解決しようとしています。これらの小さくかつ大量のプルーフによって元帳の過去のトランザクションを保護します。したがって、IOTAのセキュリティは支払いメカニズムとしての継続的な使用に大きく依存します。分散化は素晴らしい目標ですが、それを達成するための確固たる戦略を持つことがより重要であります。サトシ・ナカモトは、ブロックチェーンにブロック補助金を追加することで、ポジティブなフィードバックループを作り出しました。その一方で、IOTAには未解決のブートストラップ問題1があります。何年もの間、集中型のコーディネーターを追加することさえ、ブートストラップできませんでした。最低レベルの熱力学的安全性にも達することはできなかったのです。最近、彼らはこれを修正するために全く新しいコンセンサスプロトコルを実装しました。うまくいくかもしれませんが、プロジェクトの技術的な実績を分析すると、あまり期待はできないでしょう。いずれにしても、技術的な観点から見ると、半順序コンセンサスの使用は、ステートフルなスマートコントラクトに使用される「もつれ」を排除するため、機能が限定されます。最後にPoWをすべてのトランザクションで用いると、ブロックチェーンのPoWを検証にすべてのトランザクションが必要となるため、FlyClientやNiPowPowなどのSPVベースの公開検証可能性を利用できなくなってしまいます。
1…コンパイラ(何らかのプログラミング言語で記述されたプログラムをコンピュータが実行可能なコードに変換すること、またその技術)をコンパイル対象のプログラミング言語で作成した際に、その最初のコンパイルをどうするかといった問題。(参考:Wikipedia)
RSK実装を支援するために、新しい取引所との話し合いはありますか?
当社は、デジタル資産取引プラットフォームにおける資産統合の可能性について、調査、管理、またはコメントすることはありません。組織としての私たちの継続的なフォーカスは、ネットワークの採用を増やし、金融包摂やその他の問題に取り組むユースケースやアプリケーションを構築することです。
暗号コミュニティにはもっと規制が必要だと思いますか? 必要な場合、どのようなものですか?
一般的に、規制は非常に複雑なテーマです。ブロックチェーンでは特にそうなのですが、私はこの問題の専門家ではないので、この問題に関しては弁護士と監督者に委ねているのです。最後に付け加えておくと、おそらく市場自体が、この分野で必要とされる主要な規制を決定していくことになると思います。