RSK応用編⑤:ブロックチェーンで変わる運転免許証

この記事では、RSKとパートナーシップを結ぶアルゼンチン企業「Grupo Sabra*1」の共同創設者Pedro Perrota氏 *2(pperrotta@gruposabra.com)をお招きし、RSKとのパートナーシップについて分析します。アルゼンチンの運転免許証を発行する機関、ANSV(Agencia Nacional de Seguridad Vial、国家交通安全局)の実際のユースケースを通して見ていきましょう。

*1…2009年創業。ソフトウェアサービスやビジネスにおける問題解決を専門とするアルゼンチンの企業。

*2…IAEビジネススクールを卒業後、マイクロソフトで10年勤務したのち、Grupo Sabraを立ち上げる。

Q. ソリューションについて簡潔に説明していただけますか?

今回提案されたソリューションは複数管轄のネットワークにより統合されたマルチブロックチェーン構造の構築を目標としています。またこのマルチブロックチェーンはANSVによる管理のもと、ANSVよる特定の目的達成のために構成されます。一般的な他のブロックチェーンネットワークとも相互に繋がることができ、ANSVのデジタル・シグネチャー*3プラットフォームと統合される予定です。

*3…暗号化された署名情報で、電子文書の作成者が本人であること、および改ざんなどがされていないことを証明する。

このネットワークは特にデジタル運転免許証に対する需要に応じるため設計されていますが、さらに、今後ANSVが可能な範囲で新しいシナリオを組み込むことが想定されるため、それらに適応しやすいフレキシブルなものとなります。同時に、これら新技術のめまぐるしい進化に対応していくことのできるデザインとなる予定です。

Q. 現在、解決に向けて取り組んでいる課題はなんですか?

最近実用化された第1バージョンのデジタル運転免許証に整合性を守るためのメカニズムが既に備わっているので、現在は、トレーサビリティ・透明性・不変性・セキュリティーに焦点を当て、それらの動作やメカニズムの大幅な改良に取り組んでいます。

Q. ターゲットを教えてください。

  • 発行済の2千200万の運転免許証
  • 毎日更新される1万5000の運転免許証
  • 運転免許証発行権を持つ24の管轄ノード
  • 治安部隊(警察)
  • 8000の市町村

Q. ブロックチェーンの付加価値はなんですか?

このプロジェクトの目的と重なる部分が多くなりますが、ブロックチェーンの構造は運転免許証情報の不変性や整合性を保証することができます。さらに内容を検証する際はスムーズに情報を共有することもできます。これにより、システム全体の可用性・スケーラビリティ・性能のレベルが向上します。

従来のテクノロジーにも実装可能なソリューションという点で、本プロジェクトが掲げる目的達成のためにブロックチェーンを使用するメリットは以下の通りです:

  • 優れた回復力、耐障害性とサイバー攻撃に対する抵抗性
  • 完全かつ不変の監査記録が可能

Q. このソリューションのためにRSKを選んだのはなぜですか?

RSKはイーサリアムに対応しており、かつRSAタイプ*4のデジタル証書によって署名されたブロックチェーン取引に対応できる唯一のプラットフォームであったため、今回の目的に最適なサービスを提供してくれます。ANSVによって発行される公認免許保持者の署名はRSAタイプですが、他のプラットフォームではECDSA(楕円曲線DSA)タイプ*5のアルゴリズムのみ対応していました。

以上の理由に加え、RSKを使えば公開鍵と秘密鍵1セットだけで済むこと、さらにANSVが発行するデジタル証書がブロックチェーンネットワークに送られるトランザクションの署名に再利用できることなどを加味し、RSKを選びました。

*4…素因数分解を利用した公開暗号方式の一種で、デジタル署名では暗号化を公開鍵によって行い、復号は個人のみが所有する秘密鍵によって行われる。デジタル証明書にも利用される。

*5…楕円曲線を利用した公開暗号方式の一種で、主にデジタルコンテンツの著作権保護やICカードなどに利用されている。

 


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