RSKとLiquid比較:サイドチェーン最新情報 (1/4)

この投稿はセルジオ・ラーナー氏によるブログ投稿、The Cutting Edge of Sidechains: Liquid and RSKの一部を記事化したものです。

サイドチェーンとは?

画像:ブロックストリーム社公式サイト

2016年、カナダのビットコイン関連開発会社であるブロックストリーム社 (Blockstream)は、ビットコインの拡張性の解決策として、サイドチェーンを考案しました。もともとサイドチェーンは、クロスチェーンSPV証明(p2ptradexのように)を用いたアトミックスワップとアルトチェーンを融合させたものでした。因みに、「サイドチェーン」は正式な名称ではありませんが、異なる暗号資産(お互い異なるブロックチェーンによって生み出されたアセット:例、BTCとETH)での支払いを可能にするトラストを最小化したブロックチェーンを指して度々使用されます。ビットコインのサイドチェーンは、ビットコイン独自の報酬システムに殆ど影響を与えずに、ビットコインを改良することが出来ます。サイドチェーンによってもたらされるメリットとしては、ユーザーアセットの発行、ステートフルなDeFiソリューションを可能とするスマートコントラクトコミットチェーンスケーリング迅速な決済ファイナリティ、そしてより安全なプライバシー保護などがあげられます。数あるサイドチェーン・プロジェクトの中でもLiquidとRSKは際立っていると言えるでしょう。どちらもビットコインのサイドチェーンとして実装されてから活発な動きを見せています。

フェデレート・ペッグド・サイドチェーン

フェデレート・ペッグド・サイドチェーン (Federated Pegged Sidechain) はメインチェーン上のトークンが、マルチシグ・アドレスにおいてロックされたと同時に、また別の固有トークンを発行します。このマルチシグの秘密鍵は複数の管理機関によって生成、管理されます。このメインチェーンとサイドチェーンのトークンをロック、アンロックするメカニズムを一般的には、ツーウェイペグ(Two-way Peg)と呼びます。フェデレート・サイドチェーンは多くの種類が存在するため、各々の微妙な違いを理解しておくことが重要になります。初めに、ブロックストリームとRSKラボの説明に則りながら、LiquidとRSKサイドチェーンをそれぞれ簡単に見ていきましょう。

ブロックストリーム社によるサイドチェーン、Liquid

Liquidとは、世界中の暗号通貨取引所と機関を繋げる相互決済ネットワークであり、より迅速なビットコイン取引とデジタルアセットの発行を可能にするサイドチェーンです。Liquidネットワークは取引所、ブローカー、マーケットメーカーのためのブロックチェーンであり、ネットワークの他のメンバーとの迅速でプライベートなビットコイン取引を可能にします。Liquidが発行したアセットを通じて、ネットワークメンバーは法定通貨や証券、更には他の暗号通貨さえトークン化することが可能です。Liquidペグとコンセンサスは管理機関のフェデレーションによって管理されます。Liquidサイドチェーンによる固有トークンはLBTCとなります。


画像:ブロックストリーム社公式サイト

ブロック・イクスプローラー: https://blockstream.info/liquid/

Netstat: https://liquid.horse/

資料(白書): https://blockstream.com/whitepapers/

ビットコインにスマートコントラクトを、RSK

RSKはビットコインマイナーによって守られているステートフルなスマートコントラクト・プラットフォームであり、現段階では最も安全なPoWを基盤としたスマートコントラクト・ネットワークです。これによって、様々なdApps (分散型アプリケーション)の開発が可能となります。サイドチェーンとして、RSKはビットコインの通貨としての使用領域を拡大させ、エコシステムの価値を増幅させます。dAppsはSolidity (スマートコントラクト用プログラミング言語) コンパイラーや、Web3スタンダードライブラリを使用して作成することが可能であり、イーサリアムとの互換性を持ちます。また、RSKはRIF Lumino決済チャンネル・ネットワークが提供する更なるオンチェーンスペースとオフチェーン・トランザクションによって、ビットコイン決済のスケーリングを可能にします。RSKツーウェイペグはRSKフェデレーションによって守られ、ブロック承認はマージマイニングによって保護されています。RSKサイドチェーンにおける固有トークンはRBTCとなります。

画像:RSKイクスプローラー
2019年7月29日15時現在

ブロック・イクスプローラー: https://explorer.rsk.co/

Netstat: https://stats.rsk.co/

Testnet Faucet: https://faucet.testnet.rsk.co/

資料: https://github.com/rsksmart/rskj/wiki

RSK/Liquid 比較表

どちらもサイドチェーンの領域においてはリーダー格の存在ですが、お互い決定的な違いがあります。次の表の中で、RSKとLiquidを比較してみましょう。私が2015年から共同開発しているサイドチェーンであるRSKは、2018年1月にロンチされました。一方、Liquidはブロックストリーム社によって開発されたサイドチェーンであり、2018年9月から運用されています。LiquidのHSMに関する内部仕様の多くが未だ明らかにされていないため、現在までに公開されている情報を元に、可能な限り正確な比較をしてみましょう。

機能

    Liquid

RSK

発行元

ブロックストリーム社(Blockstream)

RSK Labs

ソースコードライセンス

MIT, 防衛特許ライセンス

LGPL

ブロック生成

コンセンサス・
プロトコル

BFTバリアント

ビットコイン・
マージマイニング

ファイナリティ
(決済完了性)

2 ブロック, 不可逆的
ファイナリティ

確率的ファイナリティ

コンセンサスグループ

クローズド

オープン

ブロックプロデューサー

15のマルチシグメンバー  + 14の追加のプロデューサー, ラウンドロビン

ビットコイン・マージマイナー (近年41.3%)

フェデレート・ツーウェイペグ

種類

15のマルチシグのうち11つをフェデレ―トし, 緊急時のリカバリープロセスのために3つのマルチシグのうち2つをタイムロック

15のマルチシグの内、
8つをフェデレート

ハードウェア
セキュリティー

カスタム HSM (ソフトウェア&ハードウェア)

オフザシェルフ HSMのためのカスタムファームウェア (CFW)

フェデレーションの空き

フェデレーション

オンチェーンでの多数決で
決まるメンバーの追加/排除

フェデレーション
メンバー変更の透明性

非公開

サイドチェーンで公開

ペグの透明・秘匿性

秘匿 (暗号通貨取引所の
ユーザーの間)

透明

All-or-Nothing検閲耐性
(All-or-Nothing censorship resistance)

なし、アトミックスワップによって実現する可能性あり。

あり

コールドストレージ

あり、 コールドコインの
定期的リフレッシュ必要

なし、 将来のリリースで
ホット/コールドウォレットに
分割する可能性あり

管理機関間通信

Torを介する

なし、スマートコントラクト
からの通信はパブリック・
サイドチェーンを介して
各管理機関に流れる

メインプラットフォーム機能

発行資産

ネイティブ

ERC-20のような
ユーザーレベルコントラクト

ライトクライアント・
フレンドリーな発行資産

あり(スペシャル
サーバーノード必要)

あり

機密性

内部取引による機密性

Zether, Mobius, AZTECなどのユーザーレベルコントラクト

ソースアカウントの漏洩を防ぐためのアカウントの抽象化の
機能を持つRSKIP

スマートコントラクト

ランダム

シーケンシャル

シンプル・トランザクション毎の平均手数料 (1インプット / 1アウトプット)

10セント (*)

0.66セント (**)

平均ブロック
インターバル

1分

30秒 (*3)

シンプルトランザクション/直近のブロック
リミットによるセカンド
トランザクション

40

10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2つのプロジェクトの主な違いの詳細については、続編の記事で説明される予定ですのでご期待ください。

(*) 参考:https://blockstream.info/liquid/による平均手数料

(**) 参考:http://rskgasstation.info/

(*3) アンクルブロック数がゼロになる場合、平均ブロックインターバルが最短15秒まで短くなる。

原文:The Cutting Edge of Sidechains: Liquid and RSK